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中部プラントサービスの取り組み 第4回

多気バイオパワー

培った技術力を結集した「多気バイオパワー」
環境にやさしい木質バイオマス発電所で新たな一歩を踏み出す

最小人員で運転効率化を図る。
安全面にも有効な体制づくり。

基本設計から機器の選定・建設・運転・メンテナンスまで、 一貫して自社の技術で運営する「多気バイオパワー」。
発電された電気は、中部電力(株)の送電線を経由し中電グループ会社へ売電されている。現在、発電所には17人が在籍。
うち、4人を今後の運転員として育成中だ。
木質バイオマス発電所を支える現場スタッフを代表して、 中村さんと浜田さんに「これまでとこれから」について尋ねてみた。

年間約4,300万円の操業効率改善を実現
自治体や大学との連携により社会貢献もおこなっている

中村さん プロフィール

2018年5月 入社 多気バイオパワーPR館 兼 発電事業部多気バイオパワー 主務

他社が運営する“木質バイオマス発電所”の職に就いたあと、その知識と経験を活かすために入社した中村さん。「多気バイオパワーPR館」の見学者対応もおこなっている。「多気バイオパワー」の建設理由を聞いてみた。

「これまで発電所や石油化学プラントで培った運転や保守技術をもとに、設計・調達・建設・運営をおこない、安定した収入基盤を得られる新規事業の一環として計画しました。将来に向けた木質バイオマス発電設備のオペレート&メンテナンス(以下O&M)技術・ノウハウの習得も建設理由の一つです。運転開始後に売電電力量を向上させるため課題として挙がったのは、発電所設備の省電力化、発電所の発電効率を上げるための制御回路の開発やチップ乾燥装置の開発などです。それらを自社技術で検討・改善することで、今では年間4,300万円の事業性改善を実現でき、一つの大きな目標が達成できました」 と話す。

バイオマス発電には、農畜系などがある中で、なぜ「木質バイオマス発電」を選択したのか。

1日200t以上の燃料チップを使用するボイラへの燃料投入は自動運転の天井クレーンを採用

「当社は“社会貢献”を企業理念として掲げています。バイオマス発電は、二酸化炭素排出削減による環境負荷低減をはじめ、森林事業の活性化や放置間伐材削減による流木被害の防止などの防災対策にもつながります。“木質バイオマス発電”を選択したのは地域に貢献できるからです」
純国産(三重県を含む6県)の木材を燃料にし多気町とは、木質バイオマス地域集材制度への支援と災害時支援協定、教育支援協定を締結している。さらに、燃焼灰の有効活用や農業系バイオマスの新規開拓のため、三重大学との共同研究もおこない、多岐にわたる社会貢献活動にも取り組んでいる。

多気バイオパワーは、熱供給などの2次利用もおこなっている。どのような活用をしているのか。

「隣接する(株)ユーグレナさまでミドリムシの培養に使用するため、発電所から発生する温排水と排ガス中のCO2を供給しています」
動物と植物の特性を併せ持つミドリムシ(生物)は「バイオジェット燃料」にもなる。発電所からの排出エネルギーで新しい有用なエネルギーを作り出す好循環が生まれているようだ。そんな一面も分かる発電所のしくみを知ることができる見学ツアーもおこなっている。

「PR館には広報要員として4人在籍しています。発電所の停止時などを除けば、ほぼ毎日、見学をお受けしている状況で、年間で約1,000人の方が見学にきてくださっています」
一般の見学者は3割ほどで、ほかはメンテナンスなどを学ぶ技術系の見学者が半数近くに上るそうだ。多気バイオパワーの注目度の高さがうかがえる。

「総合的に対応できる知識をもち、見学者さまに向けて当社の技術などの紹介もしていきたい。メンテナンスを含めたO&Mの受注につながる役割ができればと思っています」と今後の抱負を話してくれた。

地域に根ざす新分野への取り組み
再生可能エネルギーで次なる成長を

浜田さん プロフィール

2010年 入社 渥美事業所運営課(中部電力渥美火力発電所運営受託業務)
2013年8月 碧南事業所電気・計測課
2016年1月 三重エネウッド株式会社 出向
2016年5月 発電事業部多気バイオパワー

2016年6月の運転開始時から「多気バイオパワー」に所属し、制御室での運転制御、管理や巡視による保守点検、送電の確認などの業務をおこなう入社10年目の浜田さん。運転開始当初は初期トラブルが多く、トラブル対応の経験が少なかったため、解決するまでに苦労を重ねたという。 「ここに配属される前は別のバイオマス発電所に出向し業務をおこなっていました。そこで身につけた知識などはありましたが、6,750kw(一般家庭約17,000世帯分の年間使用電力量に相当)を発電する“多気バイオパワー”とは構造が違うことで、トラブル発生の際は終始戸惑っていました。今では以前と比べると設備改善や対策をして解決できていると思います」 また、所内で消費する電気量を削減するため、設備の省エネ化や発電効率の向上をおこない、売電電力量を向上させることができるようになったと話す。さまざまな改善により、所内率を約4%削減させることで売電電力量を向上させたようだ。

「木質バイオマス発電に参入するうえで重要な点は、20年間の固定価格買取制度(FIT制度)のなかで、『安定した燃料の調達ができるか』ということだと思います。大規模になると、たくさんの燃料が必要になる分、価格や量などが課題となります。小規模になると、建設費用などのコストをどう抑えるかが課題となりますが、地産地消の燃料を確保することで、地元の林業活性化にも期待がもてます」

「多気バイオパワー」では、竹の繁茂により獣害に悩まされる多気町の里山を取り戻す活動に寄与するため、ボイラの燃料としてあまり好まれない “竹材”を、町民の人たちから集めて「地域集材制度」のもとで引き取りをおこなっている。大量の燃料を使用する中で竹材は少量に過ぎず、ボイラにストレスを与えることも少ない。また、2019年から地元の「おいない祭り」に出店し、多気バイオパワーを身近に感じていただき、地域に根差した活動を通じて地元との良好な関係の維持・構築するための取り組みを行っている。2020年の5月には「多気第二バイオパワー」の着工、2021年7月に運転開始を目指す計画もされている。

「タービン建屋」で五感を研ぎ澄まし異常がないかを確認する O&Mを向上させる場所でもある

「多気第ニバイオパワーの発電規模は1,990kw(一般家庭約4,600世帯分の年間使用電力量に相当)。現在は多気バイオパワーで年間5,500万kwhを発電し、多気第二が完成すればプラス1,600万kwhをバイオマスで発電することができます。合計すると年間で約32,000tのCO2削減につながります」

今後は“CO2排出削減”や“産業廃棄物の削減”を目標に研究開発に取り組みつつ、これまで培った技術に、バイオマス発電事業で得た独自の技術や知見を活かし、他の発電所への「技術提案」や「O&M受注」、発電所の「建設受注」も積極的に開拓していく。会社が大きく成長する変化の機と捉え、中部プラントサービスの新分野へのチャレンジはこれからも続いていく。

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